新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、企業の資金繰りが急速に悪化している。安倍晋三政権は過去に例がない45兆円規模の支援に乗り出すが、その効果は見通しにくい。期末ごとに危機を迎える「倒産ドミノ」が続出する事態が予想され、経済のV字回復はその雲行きが怪しくなってきた。

4月7日、新型コロナウイルスの感染拡大に対応する政府の緊急経済対策がまとまったのと同じ日、山口県萩市の観光ホテル「萩グランドホテル天空」の運営会社、長州観光開発が自己破産した。負債総額は18億円。この日までに従業員約70人は全員解雇された。
同社は1972年にホテルを設立。収容人数は萩市内随一の最大800人を誇り、240畳の大宴会場、さらには500坪に及ぶ庭園大温泉「弘法寺の湯」を売りに、団体旅行客を中心に県内外から人気を集めてきた。

ところが、年明け以降、コロナ感染拡大に伴って経営環境は一変した。全国での外出自粛ムードが広がり、客足が一気に遠のき始めたからだ。宿泊客の数は3月で前年同月比8割減の1100人程度まで急減、4月は95%減となった。ホテルの運転資金が枯れ始め、過去の設備投資などに伴う借入金返済がままならなくなった。経営支援に乗り出す企業は現れず、自己破産の道しかもはや残されていなかったという。
「3月危機」乗り切れず倒産
長州観光開発のケースは3、6、9、12月という期末に資金ショートする典型的な例と言える。経営破綻までの経緯を知る関係者の一人は「たとえ政府や自治体などからの金融面での支援を受けたとしても、客足が戻ってくる見通しが立たないため、多少の延命はできても抜本的な再生・再建はできなかったはずだ」と語る。
実際、「3月危機」を乗り切れず、倒産する事例が後を絶たない。
民間調査会社の帝国データバンクによれば、3月の倒産件数は744件で、前年同月比14%増となった。同社が独自に抽出した「コロナ関連倒産」も2月中旬からの2カ月ほどで、全国で50件ほどに達し、その数は日を追うごとに増えている。
飲食、宿泊業を筆頭に、いずれも長州観光開発と同様、人が出歩かなくなることで売り上げが減る、給与カットや人員削減に踏み切るがそれだけでは間に合わない、借入金返済期限が迫るがその原資が足りない──という悪循環のルートをたどる。コロナの感染拡大に一向に歯止めがかからない中、たとえ政府や都道府県などからの支援を受けたとしても、悪い循環を断ち切ることは容易ではない。「倒産ドミノ」を警戒する声は高まるばかりだ。
三菱総合研究所の試算によれば、コロナの影響で経済活動が大幅に制限される状況が6月まで続くと、2020年の世界の成長率は0.5%(19年は2.7%)にまで落ち込み、12月まで続けば、09年以来のマイナス成長に陥る。日本も例外になるわけがなく、19年度、20年度ともにマイナス成長を予測する。
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