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新型コロナウイルスが製造業のサプライチェーン(供給網)を寸断している。東日本大震災とリーマン・ショックが相次ぎ襲ってきたかのような衝撃が世界に広がる。今回、見せつけているのは、拠点を分散するだけでは危機をしのげない現実だ。

中国の工場では生産が回復しつつある一方(左)、米国の自動車工場の多くは操業停止に追い込まれた(写真=左:Barcroft Media/Getty Images、右:Scott Olson/Getty Images)

 「これ以上、お客様への供給が止まるようなことがあってはならない」。ノート型パソコン「レッツノート」を生産するパナソニック神戸工場(神戸市)の担当者は緊張感を漂わせる。主力機種の一部で2月以降、在庫切れが続いているからだ。年明けから中国で新型コロナウイルスの感染が急拡大。複数の機種に使う部品を製造する中国の企業からの供給が止まったことが原因だ。

 電子情報技術産業協会(JEITA)が発表した2月の国内のパソコン出荷台数は、前年同月比20.4%減の50万台。特にノート型の減少幅が25%と大きかった。「日本メーカーはパソコンの部品の多くを中国のサプライヤーに頼っている。その影響が供給不足につながった」とJEITAの担当者は分析する。

 財務省の2月の貿易統計を見ても、中国からの輸入額のうちパソコンなど「電算機類」は前年同月に比べて37.2%減、「電算機類の部分品」は同54.4%減と大きく落ち込んだ。

 パナソニックは住宅設備でも部品調達に苦しむ。システムキッチンやトイレの受注を一時停止したほか、換気扇は3月末時点でも受注を停止している。

 TOTOやLIXILグループもトイレやシステムキッチンなどの納期が遅れると通知している。いずれも中国の部品メーカーからの供給が遅れているためだ。需要はあるのにつくれない状況に陥っている。

中小企業に広がる影響

 影響は大企業にとどまらない。東京商工リサーチが中小企業を対象に2月28日に実施した調査(有効回答174社)によれば、約4割が「サプライチェーンに支障」が出ているとした。「中国で建材生産がストップし、メーカーに発注しても入荷せず工事が遅延」(建設業)、「住宅部材の調達難で工事が完工できず、引き渡しができない案件が出ている。顧客との契約で損害金を支払う可能性も」(マンション開発)など、建設・不動産業界にも影響が広がる。

 特定の地域での生産活動がストップし、サプライチェーン(供給網)が寸断される──。日本企業にとっては、2011年3月に発生した東日本大震災を思い起こすかもしれない。あの時も東北地方を中心に工場の稼働が停止したり、物流が混乱したりして、被災しなかった地域の工場でも稼働に必要なモノがそろわない事態に見舞われた。

 当時の日本の鉱工業生産指数を振り返ると、その衝撃度がうかがえる。同年3月の指数(15年=100)は2月から一気に17.2ポイント低下し、87.3を記録。翌月も同水準にとどまった。

 中でも、マイコンを生産する半導体大手ルネサスエレクトロニクスの那珂工場(茨城県ひたちなか市)の被災はダメージが大きかった。同工場ではクリーンルームの天井が落ち、多くの製造装置が倒れ、生産再開まで3カ月を要した。エンジンやパワーウインドーを制御するマイコンを調達できなくなった自動車各社は軒並み生産を停止。「乗用車」の生産指数が震災前の水準に戻ったのは、震災から半年後だった。

日経ビジネス2020年4月6日号 12~14ページより目次