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世界的ベストセラー『銃・病原菌・鉄』や最新作『危機と人類』をものしたジャレド・ダイアモンド氏が警告を発する。新型コロナウイルスは野生動物を起源とする可能性が高い。次なる同様の感染被害を防ぐためには、野生動物の取引を全世界で完全に止めることが不可欠だと言う。

ジャレド・ダイアモンド氏
米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)地理学教授。米ハーバード大学で生物学、英ケンブリッジ大学大学院で生理学を修めた後、進化生物学や人類生態学を駆使した学際的な研究を続ける。ピュリツァー賞など受賞多数。

 次に現れるであろう新型ウイルスについて、今、考察を始めるべきだ。

 「早過ぎるのではないか」。「COVID-19」と名付けられた感染症の拡大が大規模化した矢先に、なぜ次のウイルスについて考える必要があるのか、と反論する人があるかもしれない。「必要だ」というのが我々の答えだ。今こそ、次のウイルスについて考えなければならない。

 なぜなら、2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した時、我々は次なる感染症の大流行について考えることを怠った。その結果、避けられたはずの今回の感染拡大を許してしまった。COVID-19が基本的にSARSと同じ経路で広がったのはほぼ間違いない。

 新興の感染症は人類の間で自然に発生したものではない。COVID-19やSARSだけでなく、AIDS(後天性免疫不全症候群)やエボラ出血熱、マールブルグ病も同様だ。

 これらの感染症は動物の感染症(いわゆるズーノーシス=動物由来感染症)が、動物の宿主から人間に感染したものだ。魚やエビなど、人間とは縁遠い動物から感染したものではない。人間が魚やエビと接触する機会は多いものの、これらが感染源とはなっていない。感染源は最も近縁の動物である人間以外の哺乳類だ。

 近縁の動物から感染が起こる理由は単純明快である。病原菌は宿主の体内の生化学的な環境に適応すべく進化する。したがって病原菌にとって、新たな宿主の体内環境が元の宿主の体内環境と類似していれば、新たな宿主に感染するのは容易なのだ。人類は哺乳類であり、魚やエビとは異なる。このため、人類がかかるズーノーシスのほとんどは他の哺乳類からの贈り物だ。