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終息が見えない新型コロナウイルス。感染の恐れは企業活動を萎縮させ、ヒトの動きにブレーキをかけた。世界経済は逆回転し始め、株式市場は低調だが、真の影響が及ぶのはこれからだ。ウイルス感染を防ぎながら社会を円滑に動かさなければいけない。そのための新秩序の模索が始まっている。

東京ディズニーランドとディズニーシーは2月29日から3月15日まで臨時休園となった(写真)。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市)も同期間に休園する(写真=ZUMA Press/アフロ)

 「状況が変わった。話は続けているが、結論は先になる」。経営危機に陥ったマレーシア航空が再建に向けて募るスポンサー探しで、有力候補になっている日本航空(JAL)。同社幹部はディールの先行きに不安を隠さない。理由は新型コロナウイルスのまん延だ。ディール関係者も「取引がストップしかけている」と悲観的な見方を示す。

 マレーシア航空は2014年、2度の墜落事故やLCC(格安航空会社)との競争激化で経営危機に陥った。事実上、国有化されたものの経営改善に至らず、事業を支援できるスポンサーを募った。JALは選ばれれば25%程度、金額にして300億円近い規模を出資する案を出したとみられる。航空連合を形づくって成長著しい東南アジアの空の便を広げられるうえ、首都のクアラルンプールをハブ空港として使えるメリットを見込む。東南アジアで先行するライバル、全日本空輸(ANA)を追撃するJALの切り札になるとみられていた。

マレーシア航空救済に暗雲

マレーシア航空(写真右)は2014年の墜落事故を機に経営危機に陥った。日本航空がスポンサーの有力候補だが、ディールの見通しが立たない(写真=右:ロイター=共同)

 昨年から本格化したスポンサー探しは入札を通じ、JALが候補となる4陣営に残った。当初はマレーシアに拠点を置く大手LCCのエアアジアが最有力と目されたが、エアバス関連の贈収賄事件に幹部が関わったとして後退した結果、JALの存在感が高まっていた。

 ところが新型ウイルスで環境が一変してしまった。各国で入国制限が相次いで航空便の利用者が急減し、航空各社の業績は悪化している。マレーシア航空の経営もさらに厳しくなり、JALも資金余力の再考を迫られる。ウイルスの影響がどれだけ長引くか読めず、ディールの見通しが立たなくなった。

 新型ウイルスはアジアの航空勢力図を変えそうだ。急成長してきたエアプサンなど韓国LCC6社は2月28日、「日本不買運動に続く新型コロナの影響で絶体絶命の崖っぷちに立たされた」と、政府に緊急支援を共同で要請した。赤字が続くタイ国際航空も日本線などで搭乗率が急低下し、危機的な財務状況がさらに追い込まれている。

 こうした状況が長引けば、アジアで経営が行き詰まる航空会社が出てくるのは避けられない。航空大手はコードシェア便やマイレージの相互乗り入れといった企業連合を形成してきた経緯から、1社が経営不振に陥ると、横のつながりで救済し、大きな混乱を起こさずに便数を増やし続けてきた。

 だが、今後は様相が変わる。「航空会社は全社そろって苦しくなり、買い手もいなくなる」(投資銀行関係者)との懸念が広がる。韓国ではアシアナ航空が昨年末、建設大手のHDC現代産業開発に買収された。異業種を含めた航空再編が進む可能性が高くなっている。

日経ビジネス2020年3月9日号 14~18ページより目次