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前田建設工業が、TOBによって傘下の前田道路株の51%を取得し、同社を子会社化する方針を発表した。だが、前田道路はこれを拒否。資本関係の解消を求め、「親子げんか」に発展している。昨春の「物言う株主」のある行動が両社の亀裂を招き、相互不信を解消できぬまま事態は泥沼化した。

子会社化を目指すが……
●関係企業の資本関係
注:数字は持ち株比率

 「身近な身内のアクティビスト(物言う株主)だと思っていますよ、僕は」

 前田建設工業が実施しているTOB(株式公開買い付け)に反対を表明した1月24日、TOB対象の前田道路の今枝良三社長は率直な思いを吐露した。

 前田建設は前田道路の株式約25%を保有する筆頭株主で、前田道路を持ち分法適用会社にしている。一方、「親子」に近い関係でありながら直接の取引関係が売上高の1%未満で、現状、シナジーはほとんどない。前田道路の関係者いわく、「親しいとも仲が悪いとも言えない関係が長く続いた」。

 その関係がこじれている。1月20日に前田建設が表明したTOBに対して、前田道路は資本関係の解消を求めるなど対抗姿勢を鮮明にしている。TOBは敵対的買収に発展した。

 「親子げんか」を誘発したのはアクティビストファンドだ。両社の関係に亀裂が走ったのは昨春、香港のオアシス・マネジメントによる株主提案が来てからのこと。6月の株主総会を控え、前田道路に自社株買いの実施、委員会等設置会社への移行、社外取締役の派遣などの要求を突きつけてきた。

 この段階では、前田道路はオアシス側の提案を拒否する考えだった。だが、「親」である前田建設に相談に行ったところ、すれ違いが起きる。

 全面支援を期待した前田道路に対して、前田建設は「株主提案に賛成することもやぶさかではない」という反応だったという。しかも、前田建設が派遣する取締役の増員を持ち出した。味方どころか、逆に支配を強めようとしている──。そんな疑念を深めた。

 前田建設側の認識は大きく異なる。

 「自社株買いなどの要求は聞くべきではない。アクティビスト側の社外取締役を受け入れるのであれば、前田建設の社外取締役を受け入れた方がいいと提案した」(幹部)。社外取締役の増員を提案したのは、アスファルト合材カルテルなど、前田道路で不祥事が相次いでいたからだと主張する。最終的に前田建設は、前田道路の株主総会で会社提案に賛成している。

 真っ向から食い違う両社の主張。ただ、この時に前田道路が「真の敵は前田建設」というスタンスに転じたのは間違いない。

 すれ違いは両社が親子の契りを交わして以降、垣間見えていた。

 もともと前田道路は高野建設という社名で前田建設とは無関係だった。それが1962年、経営不振により会社更生法の適用を申請。前田建設の支援で再建を果たした。

 再建後の経営は安定していたが、前田建設との間にシナジーが乏しいこともあり、前田道路の経営陣は微妙な思いを抱いていたようだ。「当時の先輩たちには、いずれは独立したいという思いがあった」と今枝社長は振り返る。

 それに対し前田建設は、前田道路を現在進めている「脱請負」路線のカギになる存在だとみていた。