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国内最大の小売企業、イオンが23年ぶりの社長交代を決めた。創業家の岡田元也社長が会長に退き、イオンモール社長を兼ねる吉田昭夫副社長が社長に昇格する。吉田氏が自らの課題として掲げたのはデジタル化。「アマゾン・エフェクト」だけでない脅威がイオンに迫っている。

吉田次期社長(左)は「リアルを持つ強みをどう出すか」と語った(右は岡田社長)(写真=共同通信)

 「想定外のことがいつでも起こる中で、想定外に対応できる新しいイオンのリーダーになってもらえる」。1月10日、創業家出身の岡田元也社長グループCEO(最高経営責任者、68)は千葉市の本社で開いた記者会見で語った。3月1日付で代表権のある会長に就き、吉田昭夫副社長(59)が社長に昇格する。社長交代は23年ぶりだ。

 吉田氏は事業子会社、イオンモールの社長を2015年から務めている。19年3月からはデジタル事業も担当し、11月に発表した英ネットスーパー大手、オカドとの提携も主導した。誰もが予想する下馬評通りの人事というわけではなく、ここ数年で急速に存在感を高めてきた人材だ。

 吉田氏は会見で「特にデジタルは強化したい」と述べた。念頭にはアマゾン・エフェクトの脅威がある。米アマゾン・ドット・コムのようなEC(電子商取引)事業者が、従来型の小売企業の顧客を奪うという当たり前の現象に、イオンは対抗できていなかったという危機感は強い。

リアルとECの連携

イオンはデジタルシフトを 掲げてきた
●近年の主な取り組み

 具体的には「オンラインにどう対抗するかというより、リアルにどうオンラインをなじませていくのか。逆にリアルな場を持っている強みを、どう出していくのかを考えている」と述べ、ECと実店舗の連携を進める考えを示した。

 対アマゾンで先行しているのが小売り世界最大手の米ウォルマート。16年に33億ドル(当時のレートで約3300億円)をかけて新興ECサイトを買収。一方で店舗の働き方を変えるデジタルツールの内製や改善を進めた。ネットで注文して店舗で受け取るサービスを普及させ、米国のEC事業は6四半期にわたり、4割前後の増収を続けている。

 国内の競合では、西友が楽天とネットスーパー事業で共同出資会社を設立済み。楽天の知見を生かしてサイトの使い勝手を改善し続け、前年比3割増のペースで売り上げが伸びている。ネットスーパー専用の配送センターを新設し、攻勢を強める。

 イオンも17年に発表した3カ年の中期経営計画で「デジタル」を重点領域に掲げ、店舗中心だった投資を「IT・デジタル・物流」にシフトする方針を示していた。しかし主力のイオンモールはネットスーパーとの相性が良いとは言えない。多くが郊外に立地する大規模店舗で、周囲に住宅が密集しているわけではない。売り場も広く、店内で生鮮品や日用品をピックアップして配送に回す作業の効率が悪い。