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新年早々の米軍によるイラン司令官殺害を受け、波乱の幕開けを予感させた2020年。だが、案じてばかりもいられない。技術革新は続き、社会は大きく変わろうとしている。企業トップは今年、どんな課題に取り組むのか。東京五輪を控える小池百合子・東京都知事を含む5人に聞いた。

 2020年の世界と日本の経済はどう動くのだろうか。年明け早々には、米国とイランの緊張が高まり、世界経済の先行きには早くも不透明感が漂う。気がかりなのは、貿易摩擦の続く米中経済の動向だろう。多くの日本企業が両国に足場を築き、収益の柱に据えている。両国は19年末に貿易交渉で「第1段階の合意」に達したとはいえ、対立の収束は見通せない。米中に車載や家電・産業用モーターなどの大口顧客を抱える日本電産の吉本浩之社長COO(最高執行責任者)はこう語る。

5つの新技術分野で 世界的に大きな需要
吉本 浩之
日本電産 社長COO

(写真=太田 未来子)

 米国については足元で産業用モーターなどの受注がやや鈍っていますが、実感としてはまだ強い。(取引先などの)米国人に聞いても、「景気はいい」という声は多いです。

 一方、中国では地場自動車メーカーなどの一部が(景気低迷の中で)淘汰されるなど、経済の構造調整が長引いています。自動車に限らず、データセンター用のバックアップ電源用モーターなども動きは鈍い。エアコン用モーターも在庫は一部残っています。20年も米中の貿易摩擦は容易には解決に向かわないでしょう。中国は厳しい年になることは覚悟せざるを得ません。

 米中経済は明暗を分けるとみる吉本社長に対し、日本電産と同様に米中をはじめとするグローバルで事業を展開する東芝の車谷暢昭会長兼CEO(最高経営責任者)の見立ては少し違う。

ディスラプティブな変化 対応が問われる一年に
車谷 暢昭
東芝 会長兼CEO

(写真=北山 宏一)

 米国では大統領選がありますが、金融はどちらかといえば緩和傾向が続くでしょう。米中関係も大きな意味で長い紛争は続くでしょうが、いったん合意という結果は出ました。19年より悪くなることはないでしょう。

 中国については金融政策も財政政策もまだまだやれるとみています。GDP(国内総生産)の200%以上の民間債務があるとされますが、民間と言っても半分は政府。コントローラブルだと思います。

 かつて三井住友銀行の副頭取を務め、欧州最大の英ファンドの日本法人会長も経験した車谷氏。欧州や日本の経済状況についても私見を述べる。

 欧州では英国の欧州連合(EU)離脱問題が片付く。そういう意味では不透明感を拭えます。国内市場も消費増税は実施されましたが、財政出動で対応できています。多少の政策調整はあるでしょうが、19年より様々な問題が払拭されてくるので、大きな問題がなければ、20年は日本にとっては悪い年にはならないでしょう。

 もっとも、昨年より経済情勢が良くなったとしても、企業を取り巻く環境の厳しさは変わらない。AI(人工知能)など、デジタル技術の革新が、業界の競争環境のみならず、社会そのものを大きく変えようとしているからだ。車谷氏もそれは認める。