アサヒグループホールディングス傘下のアサヒビールが2020年からビール類の販売数量の開示をやめる。国内大手4社のシェア算出が困難になり、市場動向が把握しにくくなる。過剰なシェア争いから脱却するためというが、首位陥落の危機を前に「勝ち逃げでは」との声も上がる。

王者アサヒは、キリンの追撃を受ける
●大手4社のビール類(ビール、発泡酒、第3のビール)のシェア
<big>王者アサヒは、キリンの追撃を受ける</big><br /><small>●大手4社のビール類(ビール、発泡酒、第3のビール)のシェア</small>
注:1991年までは卸への販売数量、92年からは課税出荷数量に基づくシェア(写真=的野 弘路)

 アサヒビールは12月11日、中間決算と本決算で公表してきた半期と年間の「ビール類」の販売数量の実数を2020年の統計分から非開示にする方針を発表した。他のビール大手3社は数量の開示を続けるが、アサヒの数字が欠ければ、売れ行きを比較し、国内シェアを算出するのが難しくなる。

 ビール、発泡酒、第3のビールというカテゴリー別の数量実績を非公開にし、「ビール類」合計の金額実績に切り替える。月次で公表してきた販売実績の前年同月比の増減率も数量から金額に変える。「スーパードライ」「スタイルフリー」「クリアアサヒ」の3ブランドに限り、数量ベースの開示を続ける。

 収益性を度外視した過剰なシェア争いから脱却する狙いがあるとアサヒは説明している。今後は経営評価の指標も金額を重視する。スーパードライを「ビール売上No.1」と宣伝してきたアサヒらしからぬ変身ぶりだ。

 過当競争をやめ、シェア重視から収益重視へ転換するという考え方は間違っていない。しかし、そのために基礎的な経営数値の公表を取りやめる点については批判の声が上がる。ある証券アナリストは「市場動向や業界内の立ち位置など、投資判断に必要な基本情報が失われる。長年続いてきた統計が途絶える損失は大きい」と語る。

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