三菱商事が11月25日、中部電力と共同でオランダの電力会社エネコの買収に名乗りを上げた。5000億円の買収資金の8割を負担する久々の大型案件だが、株式市場はほぼ無反応だ。業績を大幅下方修正する中、「川下」と「デジタル」重視の戦略が市場に伝わらず成長力が問われている。

<span class="fontBold">三菱商事が4000億円を投じる蘭エネコは陸上風力が強み</span>
三菱商事が4000億円を投じる蘭エネコは陸上風力が強み

 「損はしない手堅さは感じるが、成長へのわくわく感に乏しい」──。ある市場関係者は、三菱商事が久々に打って出る大型投資をこう評する。

 同社は中部電力と共同でオランダの電力会社エネコ買収の優先交渉権を獲得した。ロッテルダム市など44の自治体から総額41億ユーロ(約5000億円)で来夏までに全ての株式を買い取ることを目指す。三菱商事の負担は8割の約4000億円。だが発表翌日の同社株価の終値はほぼ横ばい。その理由が冒頭のコメントのような周囲の評価だ。

 資源価格が下落して巨額の減損処理が相次いで以降、商社各社は大型投資を控えてきた。今回の投資額の大きさは、伊藤忠商事が2015年に中国の中信集団(CITIC)へ投じた6000億円をほうふつさせる。

 それでも株価がほとんど反応しなかった理由の一つは、短期的な利益貢献が小さいことだ。そもそも電力事業は、「息は長いが利ざやは薄い」(別の大手商社)。エネコの18年度の純利益は約160億円。無形資産の償却などを踏まえると、三菱商事の連結純利益には年100億円前後の貢献と見られる。同社の20年3月期の純利益予想は5200億円。比べると2%程度だ。

 買収額が、「すごく割高ではないが割安でもない」(アナリスト)と見られたのも、株価が無反応だった要因のようだ。エネコの稼ぐ力を示すEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)に対する買収額は約10倍。電力会社の買収相場は8~10倍程度とされている。

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