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 日立製作所による日立化成売却案件が佳境を迎えている。売却先はファンドや事業会社の4陣営に絞られたようだ。だが日立化成株は高止まりしており、残った陣営からは戸惑いの声が漏れる。

今春、売却話が出始めた日立化成。日立製作所の東原敏昭社長(右)はグループから切り離す線引きとして「ルマーダ」との関連性を重視する(写真=右:つのだよしお/アフロ)

 日立製作所による化学大手の日立化成売却ディールが佳境を迎えている。今夏から入札が行われ1次入札には10社以上が応札したとされる。その中から米投資ファンドのベインキャピタル、同カーライル・グループ、日東電工、昭和電工の4陣営が2次入札に進んだもようだ。その2次入札も11月15日に締め切られる。今後はさらに絞り込まれ、日立としては年明けの早い段階で最終的な買収者を決定したい意向だ。

 日立化成は日立が51%出資する子会社。日立御三家の一社とされてきた名門だが、日立がインフラやIT(情報技術)関連に注力し事業の選択と集中を進めるなかで非中核事業とされ、売却対象になった。だがリチウムイオン電池用の負極材や半導体の封止材料では世界的に高いシェアを誇っており、多くの事業会社やファンドが買収に興味を示した。

高値でも2次入札進めず

 1次入札ではカナダの投資ファンド、ブルックフィールドや韓国のロッテケミカルなどが8000億円~9000億円超(日立化成の時価総額は足元で約7000億円)とかなりの高値で応札したようだ。だが日立は日立化成の意向や日本での投資実績、日韓関係の悪化なども踏まえ、こうした高値の応札者を2次入札に進めることはしなかった。「日立化成が買収された後に、着実に成長できる保証がない」(日立関係者)ことがネックとなった。

 日立の株主からすると、より高値で日立化成を売却することが株主利益にかなうということになるだろう。しかし日立は、日立化成の将来を考慮して、高値であれば誰でもいいということではない、と判断した。

 とはいえ残った4陣営の胸中も複雑なようだ。「日立化成の株価は高すぎる」(交渉関係者)からだ。日立化成売却報道が出始めた春より前の株価は品質不正問題の影響もあって1000円台だった。それが11月11日終値時点で3390円。株価には買収によるプレミアム(上乗せ幅)の期待値が織り込まれるものだが、日立化成の場合、ざっと2倍前後にまで膨らんだと言えそうだ。M&A(合併・買収)交渉では2~4割に設定されることが多く、2倍は破格の条件といえる。