一時は臨床試験を中止した抗認知症薬の有効性が示され、2020年初頭に米国で承認申請する方針のエーザイ。共同開発相手の米バイオジェンと積み重ねてきた経験を生かし、アルツハイマー病の治療薬で先行する構えだ。創業者の孫で31年にわたってトップに君臨する内藤晴夫CEOの執念が垣間見える。

<span class="fontBold">10月30日、決算会見で熱弁をふるう内藤晴夫CEO</span>
10月30日、決算会見で熱弁をふるう内藤晴夫CEO

 「中止と聞いたときも驚いたが、今回も非常に驚いた」。エーザイの内藤晴夫CEO(最高経営責任者)は10月30日に開いた2019年4~9月期の決算会見でこう口にした。

 その1週間ほど前の同22日、エーザイと米バイオジェンは共同開発しているアルツハイマー病治療薬「アデュカヌマブ」を20年初頭に米国で承認申請する方針と発表した。3月に最終段階にあった臨床試験の中止を発表したが、臨床試験のデータを解析し直したところ、良好な結果が得られたとして、承認申請の手続きを進めることにしたのだ。冒頭はその感想を問われてのコメントだ。

 抗認知症薬でエーザイは実績がある。アセチルコリンエステラーゼ阻害薬と呼ばれるタイプの抗認知症薬「アリセプト」はピーク時に年3000億円超の売上高を誇った。しかもこの薬は1988年に内藤氏が40歳で社長に就任した翌年に臨床試験が始まっている。それが日本だけでなく、米国や欧州、アジアでも売り上げを伸ばし、エーザイのグローバル展開の先兵となった。内藤氏にとってはいわば、我が子のような存在だろう。

 もっとも、アリセプトは認知症の症状を抑えるとされるものの、アルツハイマー病を根本的に治療する薬ではない。もっと効く薬はないか。アルツハイマー病が「アミロイドβ」というたんぱく質が脳内に沈着して始まるとする「アミロイドβ仮説」が提唱されると、エーザイはこの仮説を手掛かりに新薬開発に多額の資金を投じてきた。

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