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台風19号が東日本を中心に記録的豪雨をもたらし、各地で甚大な被害が出た。多数の堤防が決壊し、浸水被害が発生。鉄道・道路など物流網の寸断で企業活動にも影響を及ぼす。規格外の風水害を前提とした防災にどう取り組むか。積み上がるコストを前に対応が問われている。

台風19号による大雨で増水し濁流となった多摩川(上)。構内が浸水した川崎市のJR武蔵小杉駅では入場が規制され、利用客が列をなした(写真=2点:共同通信)

 「自社の災害対策は主に地震を念頭に置いている。広範囲な河川の氾濫はあまり想定していなかった」

 首都圏を地盤とする大手小売業の担当者が頭を抱える。大型の台風19号が日本を直撃するとの予報を受け、傘下のスーパー全店を店じまいするなど対策を講じていたが、埼玉県内の店舗が浸水。10月21日時点で営業再開の見通しは立っていない。

 10月12日から13日にかけ日本に上陸し、東日本各地に甚大な被害をもたらした台風19号。浸水のほか全半壊、一部損壊を含めた住宅被害や、浸水面積は2018年の西日本豪雨を上回った。企業活動にも大きな影響を与え、自動車メーカーのSUBARU(スバル)が、取引先の部品メーカーに被害が出たとして群馬製作所(群馬県太田市)の稼働を止めた。少なくとも1万台近くの完成車生産に影響が出ることになりそうだという。なおも被災地で懸命な復旧作業が続く一方で、中長期にわたる影響の大きさが懸念されている。

首都圏に出入りする物流網に大打撃
●台風19号による鉄道・高速道路の主な被害

 首都圏の巨大な物流需要を支える鉄道網の寸断もその一つ。JR貨物によると線路内への土砂流入や路盤流出などで不通になったのは、首都圏と北海道や東北を結ぶ「東北線」や、首都圏と甲信を結ぶ「中央線」など5路線10カ所。11日から17日までに540本の貨物列車が運休した。

 東日本の農産物流通の大動脈を担う東北線は、ちょうど北海道産のじゃがいもやタマネギなどの流通が最盛期を迎えるタイミングでの不通となった。日本海側を迂回した貨物列車を走らせるほか、トラックによる代替輸送で対応しているが、10月18日時点では「従来の輸送量の16%程度しか補えていない」(JR貨物広報)。10月末を予定する東北線の復旧後も、いつから被災前のダイヤで運行できるかは未定という。

 そもそも国内の物流業界はトラック運転手が慢性的に不足しており、代替輸送を容易に増やせる環境にはない。しばらくの間、首都圏を出入りする物流網への影響が残りそうな情勢だ。

日経ビジネス2019年10月28日号 18~20ページより目次