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理化学研究所が100%出資子会社の「理研鼎業(ていぎょう)」を設立した。産学連携やベンチャー支援などで基礎研究の成果を社会に還元し、得られた資金を理研に還流するのが役割だ。その姿は戦前の「理研コンツェルン」をほうふつとさせる。自主的な財源確保で、「科学者の楽園」は再興するか。

松本紘理事長(左)の念願がかない、新会社設立が実現した

 理研鼎業(ていぎょう)は、理化学研究所の知的財産権の管理やライセンシング、ベンチャーの設立支援に加え、企業との共同研究のコーディネートなどを手掛ける。要するに、理研が生み出す研究成果を社会還元する窓口になるとともに、その収益を理研に還流する役割の組織だ。

 国立研究開発法人の理研は、物理学、化学、数学、生物学など自然科学全般の研究を手掛け、論文の引用数ではトップクラスの国立大学に引けを取らない。学術情報などを扱うクラリベイト・アナリティクス・ジャパン(東京・港)が発表した「インパクトの高い論文数分析による日本の研究機関ランキング2019年版」では、東京大、京都大に次いで3位に入る。

 基礎研究のレベルは高いのに、十分な社会還元ができる体制になっていない──。京都大学の総長を経て2015年4月に着任した松本紘理事長の目にはそう映ったのだろう。13年に成立した産業競争力強化法により、国立大学法人にはベンチャーキャピタルへの出資が認められ、国立研究開発法人でも、科学技術振興機構(JST)などには研究成果に基づくベンチャーへの出資が認められてきた。ところが、理研は民間企業に出資することが法律上認められていなかった。