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激化する米中貿易摩擦がアジア経済をむしばんでいる。輸出の不振が内需にも波及し、タイやインドネシアなど主要国の成長に影を落とし始めた。米国でも景気後退入りの懸念が浮上しており、世界同時不況のシナリオも現実味を帯びてきた。

中国依存度が大きい国は減速鮮明
●アジア、太平洋各国の経済動向
出所:政策金利は各国中央銀行、GDP見通しはアジア開発銀行、豪州のみIMF、対中国輸出額は各国政府

 「国内の景気減速が顕著になってきた」。16日、タイの首都バンコクの自動車展示会に登壇したトヨタ自動車タイ法人の菅田道信社長は、タイ経済の先行きについてこう警戒感を示した。2019年1〜6月、同国でシェア首位のトヨタはタイで約17万台の新車を販売。前年同期比で21%増えたが、年後半は約15万台程度に減ると見ている。

 タイの自動車業界では好調だった前年に続き19年の販売台数が100万台を超えるとの予測だったが、足元ではその達成を危ぶむ声も出始めた。

 「想像より苦しい。5月前後を境に発注が落ち始めた」「自動車関連工場に活気がなく市場がおかしくなり始めている」。現地に拠点を持つ複数の日系部品メーカーからはこうした声が漏れ、業界内では「既にタイは不景気に突入した」とささやかれている。

 タイは米中貿易摩擦のあおりを受けて昨年9月以降、輸出が減少傾向にある。「その影響は内需に及んでいる」(みずほ銀行バンコック資金室の渡邉太郎室長)。実際、バンコクの大手不動産会社関係者は、「今年に入り中国人だけでなくタイ人の投資も鈍った」と話す。輸出の不振が企業による投資や雇用の抑制に波及し、「(不動産や自動車など)国内消費に負の影響を与え始めた」(タイ・サイアム商業銀行シニアエコノミストのタナポン・スリタンポン氏)。