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今年10月に鳴り物入りで携帯業界に参入する楽天だが、要となる通信インフラの整備遅れが明らかに。スマホと電波をやり取りする「基地局」の設置が計画通り進んでおらず、関連メーカーや工事会社も危惧する。タイムリミットまであと約2カ月。スムーズなサービス開始を実現できるか、胸突き八丁に差し掛かっている。

今年もバルセロナの携帯電話見本市で、自社のインフラ技術をアピールした楽天の三木谷浩史会長兼社長(2月)(写真=Agencia EFE/アフロ)

 「通信インフラの整備が予定より遅れているのは事実。10月のサービス開始には絶対に間に合わせなければならないのだが……」

 インターネット通販大手、楽天幹部がこう憂う。

 NTTドコモやKDDI(au)、ソフトバンクに続く携帯会社「第4軸」となる楽天。今年10月のサービス開始に向けた準備作業が遅れていることが本誌の取材で分かった。

 ドコモなどから回線を借りて格安スマホ事業を展開してきた楽天は、2017年12月に携帯電話事業への参入を発表。18年4月に総務省から電波の割り当てを受け、19年10月から自前で設備を持つ携帯会社に生まれ変わる計画だ。イー・アクセス(13年からソフトバンク傘下)以来13年ぶりに、新規参入の携帯事業者誕生と注目を集めているが、サービス提供に不可欠な通信インフラの整備が難航している。

23区内の基地局、まだ100基

 業界関係者が異口同音に証言する。「基地局の工事が遅れているのが最大の問題。このままでは十分な通信品質を確保できないエリアが出てくるのではないか」

工事の手間やコストを削減する工夫をしているが……
●楽天モバイルが展開する携帯電話用の基地局

 基地局とは、ビルの屋上などに設置してスマホと電波をやり取りする設備。この基地局が少ないと回線がつながりにくかったり、通信速度が遅かったりといった問題が起こりやすくなる。

 既存大手と違い通信インフラをゼロから立ち上げる必要のある楽天は、地方では当面、KDDIの基地局を借りる「ローミング」と呼ばれる方式で全国をカバーする。一方で、東京23区と大阪市、名古屋市については自力で基地局を設置することにしている。

 地方を後回しにし、利用者が多い都市部からネットワークを構築する計画だが、そのスタートとなる都市部での準備に遅延が発生しているのだ。

 楽天と取引のある複数の通信機器メーカー関係者によると、サービス開始直前の9月末までに5000~6000基程度の基地局を設置し、10月からのサービスに利用する計画だったという。だが工事の遅れに伴い、足元では2500~3500基ほどに下方修正している。

 この下方修正した計画の達成も現状では疑問符が付く。監督官庁である総務省が携帯各社から情報提供を受けてインターネットで公開している「無線局免許状等情報」によると、7月30日時点で正式稼働している楽天の基地局の数は東京23区内で「100」、関東エリア全体でも「118」にとどまる。

 楽天内部からは「すでに千数百基の規模で工事が済んでいる。あとは細かい手続きや機器の調整だけ」との証言もあるが、サービス開始まで残り2カ月しかない時点で、下方修正した数値の半分程度にすぎない。

日経ビジネス2019年8月5日号 14~16ページより目次