高まる中国や北朝鮮からのサイバー攻撃リスク。政府は自衛隊が運用するサイバー部隊の強化に着手した。ところが有事に守るのは自分たちの指揮通信システムが中心。民間はサイバー防衛の対象外だ。武力攻撃とサイバー攻撃を組み合わせた「ハイブリッド戦争」への備えは不十分。自衛隊OBが警鐘を鳴らす。
7月6日、静岡県熱海市に100人の自衛隊OBや官民のサイバーセキュリティー専門家が集まった。自衛隊のサイバー防衛のあり方を議論する「サイバー防衛シンポジウム」。安倍政権が昨年末に閣議決定した中期防衛力整備計画(中期防)で、サイバー空間を陸海空・宇宙に次ぐ「第5の戦場」に位置付けたのを受けて開かれた。
サイバー攻撃は、もはや日本に差し迫る脅威の一つである。何しろ、中国は10万人以上、北朝鮮は6500人規模のサイバー部隊を運用しているとされる。対して自衛隊は統合幕僚監部と陸海空を合わせてもサイバー防衛を担うのは推定250人。周辺国と比べ桁違いに規模が小さい。
脆弱な防衛体制だけではない。2005年に創設された陸上自衛隊システム防護隊初代隊長で、現在は米サイバーセキュリティー会社ファイア・アイ日本法人でCTO(最高技術責任者)を務める伊東寛氏は「外国からサイバー攻撃を仕掛けられても、自衛隊のサイバー部隊は産業界を守ることができない」と指摘する。現行の自衛隊法では、自衛隊のサイバー部隊は指揮通信などに用いる自分たちのシステムしか守れないことになっている。
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