株主総会で出た主な株主からの質問
株主総会で出た主な株主からの質問
 

 総会では解任の経緯など会社側の姿勢を問いただす声が相次いだ。LIXILの前身会社の一社である旧INAXの創業家で元会長の伊奈輝三氏や、旧INAXの城下町である常滑市の副市長も質問に立った。伊奈一族と常滑市は、瀬戸氏解任を主導した旧トステム創業家の潮田洋一郎氏らの取締役解任を求める臨時株主総会の招集請求(5月9日に取り下げ)に、英米機関投資家の共同提案者として名を連ねていた。

 「幸運を祈っています」

 総会当日、妻の言葉に背中を押されて自宅を後にした瀬戸氏を勝たせた要因は何だったのか。振り返ると、3つの要因が浮かび上がってくる。

伊藤邦雄・一橋大学特任教授に聞く
株主の画期的な勝利、ガバナンスは実質重視へ
<span class="fontBold" style="color:#ff6633;">伊藤邦雄(いとう・くにお)</span><br/ ><span class="fontBold">2014年に企業と投資家の望ましい関係を示した報告書(「伊藤レポート」)を公表し、日本のコーポレートガバナンス改革をけん引。</span>(写真=竹井 俊晴)
伊藤邦雄(いとう・くにお)
2014年に企業と投資家の望ましい関係を示した報告書(「伊藤レポート」)を公表し、日本のコーポレートガバナンス改革をけん引。(写真=竹井 俊晴)
 

 株主提案が会社提案に勝ち経営陣を選別した今回のLIXILグループの株主総会は、日本企業のガバナンスの今後を占う画期的な出来事だ。

 こうした動きの素地は徐々に醸成されつつあった。例えばオリンパス。今年の総会で物言う株主である米バリューアクト・キャピタルが推薦する社外取締役が2人選任された。物言う株主の主張を積極的に受け入れた点で、日本のガバナンス史上で大きな意味を持った。

 LIXILのケースにはもう一つ、重要な意義がある。そもそもの発端が、指名委員会に対する(旧トステム創業家の)潮田洋一郎氏の情報提供のあり方が問題視されたことだ。これはガバナンスが「形式」から「実質」へ進展しなければならない中で極めて重要なテーマだが、これまでほとんど表に出ることがなかった。

 指名委員会を作り、委員長と委員の過半数を社外取締役にするのが、ガバナンスを強化する上では望ましいとされている。しかし、これは「器」の問題に過ぎず、重要なのは運用だ。指名委員会に提供される情報の取り扱いがポイントになる。

 LIXILでは、潮田氏が瀬戸欣哉氏に関してバイアスのかかった情報を指名委員会に提供し、それを前提に議論されたという。この過程を投資家が「おかしい」と声を上げた。委員会の構成に投資家が注文を付けることはあったが、運営の仕方、特に選解任の対象者に関する情報提供のあり方に注文を付けたことはこれまでなかった。

 潮田氏から提供された情報をそのまま受け入れてしまったことは、指名委員会のあり方としては稚拙だった。今後は指名委員に選ばれた社外取締役がどのような振る舞いをするかが問われるようになる。

 そろそろ社外取締役も、経営陣だけではなく、様々な情報源をもって判断していかないと、形式論から抜け出せない。社外取締役本人に自覚と、独立性を意識した行動を促すしかないのだが、どうやって実効性を上げていくか。社外取締役の数は増えたが、質をどう高めるかという難問を、今回のケースは突き付けている。

(談)