回転ずし最大手のスシローグローバルホールディングスと5位の元気寿司が経営統合を断念した。統合を仕掛けたのは両社それぞれの筆頭株主であるコメ卸最大手、神明ホールディングスだ。破談は2年近く続いた交渉の末だったが、神明HDとスシローは最初からボタンを掛け違えていた。
●神明HDのスシロー、元気寿司両社への出資関係

スシローグローバルホールディングスと元気寿司は6月18日、経営戦略の違いが明確になったため、神明ホールディングス(HD、神戸市)を含めた資本業務提携を解消し、交渉していた経営統合を断念すると発表した。2017年9月に経営統合を目指すと公表してから2年近くたつ。この間に何が起こっていたのだろうか。
統合を仕掛けたのはコメ卸最大手で非上場の神明HDだ。元気寿司を15年に子会社化していた神明は、17年にスシロー株の32.72%を380億円で取得して持ち分法適用会社にした。このころから出資した2社を経営統合させてシェアと経営効率を引き上げるという絵を描いていた。
しかし統合実現のためには、神明がスシロー株をTOB(株式公開買い付け)で買い増す必要があった。神明が40.78%を出資して実質支配基準で子会社化している元気寿司と、33%出資のスシローが仮にそのまま統合した場合、新会社が子会社でなくなってしまうという事情があるからだ。
そもそも神明はスシロー株を取得した際の380億円の資金を借り入れで賄っており、銀行側は当初から「スシローの子会社化を求めていた」(交渉関係者)という。貸す側としては最大手であるスシローを確実に取り込ませて神明の成長につなげたかったようだ。
株価上昇、誤算の面も
ここで誤算となったのがスシローの株価上昇だ。好業績を背景にスシロー株は17年末から上昇局面に入り、破談発表の直前の19年6月17日には上場来高値の7880円を付けた。33%分の株を1株4000円で買った神明にとって、追加の株取得のハードルはぐんと上がってしまった。380億円の借り入れで有利子負債が倍増しており、財務的なリスク許容度も小さくなっていた。
神明とスシローの交渉もなかなか進まなかった。神明の藤尾益雄社長とスシローの水留浩一社長は「2人とも自己主張が強く、人に指示されるのを嫌がるタイプ」(両氏を知る交渉関係者)。神明がスシローに送り込む取締役の人選や株の買い増し案でも、両者の意見はたびたび対立したとされる。
スシローは業績が右肩上がりで、水留社長は自らの経営に自信を深めていたはずだ。英投資ファンドのペルミラ傘下にあったが、17年春に上場したことで大株主の呪縛からようやく解放されたという意識もあっただろう。それが、すぐさま神明傘下に入ることへの抵抗感につながったのではないかと業界では受け止められている。
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