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消費税率が今年10月、5年半ぶりに引き上がり、8%から10%になることがほぼ確実な情勢となった。政府は初の軽減税率を導入し、キャッシュレス決済を促すため中小小売りを対象にポイント補助策も打ち出した。増税による景気の腰折れを防ぐという思惑通りに進むのか。小売りや外食は複雑な制度への対応に追われている。

外食やイートインコーナーを持つコンビニは「店内で食べると10%、持ち帰りは8%」というダブルスタンダードへの対応に苦慮している

 6月26日に会期末となる通常国会の延長論が消え、消費税率は予定通り10月1日、8%から10%に上がる見通しとなった。消費増税は5年半ぶり3回目。政府は今回、ポイント還元や軽減税率など消費を冷え込ませないための緩和措置を打ち出した。

 外食など消費者に身近な産業で混乱を招いているが、なかでも中堅小売りで減資が相次ぐという珍しい現象が起きている。中小店舗が電子マネーやクレジットカードに対応した場合、消費者に配るポイント補助策を政府が用意し、資本金を含め中小企業と認定する条件を定めたためだ。来年6月までキャッシュレスで決済した消費者にはカード会社などを通じて政府負担でポイントが還元される。コンビニなどのFC(フランチャイズチェーン)は決済額の2%分、中小小売りは5%分となる。

中小企業で要件を満たしているとポイント原資が国から補助される
●補助制度の対象と内容(小売業の場合)
対象端末ポイント還元決済手数料
大企業なしなしなし
中小企業 3分の1を決済事業者、3分の2を国が補助 5%分を国が補助 3.25%以下ならば 3分の1を国が補助
中小企業(FC)なし2%分を国が補助なし
※資本金5000万円以下または従業員50人以下で、かつ3年間の課税所得の平均が15億円以下

5000万円以下に減資

 「対象になれるならなったほうがいい」。神奈川県が地盤のスーパー、富士シティオ(横浜市)は7月末をめどに1億円の資本金を5000万円にすることを検討するという。中小企業の定義は小売業では資本金が5000万円以下、または従業員数50人以下の事業者。前者を満たそうとする企業が相次ぐ。帝国データバンク東京支社によると2019年1~4月に減資した小売業は184社と前年同期に比べ5割増えた。

 福島県と茨城県で計30店舗以上を展開するマルト(福島県いわき市)は今年4月、資本金を9000万円から5000万円にした。クレジットカード決済をかねて導入済みのため、「政府のポイント還元の対象になる」(同社)としている。秋田県地盤のスーパー、タカヤナギ(秋田県大仙市)も5月、約9363万円から5000万円に減資した。同じ持ち株会社傘下の企業と資本金をそろえるのが目的だが、結果的にポイント還元補助の対象になり得る。

 ただ、中小やコンビニがポイント還元した場合、GMS(総合スーパー)など大手が自己負担で対抗する可能性がある。ヤオコーの川野幸夫会長は「さらなる安売り合戦になれば苦しむのは中小ではないか。増税による消費の冷え込みを抑える対策としてキャッシュレス決済を普及させようとすることがそもそもおかしい」と話す。

 飲食料品の税率を8%に据え置く軽減税率も事業者と消費者の双方で混乱を招きそうだ。「店内で食べると10%、持ち帰りは8%」という総菜や外食への対応に各社は苦慮している。

 コンビニ大手は客が会計時に店内のイートインで飲食すると申告した場合に限り、消費税率を10%とする。店内にその旨を示したポスターを掲示し、店員は原則尋ねない。国税庁が18年11月に改定した軽減税率の「Q&A」を根拠に日本フランチャイズチェーン協会が決めた方針に従った対応だが、正直に言う客の税金が上がることになる。

日経ビジネス2019年6月24日号 14~15ページより目次