中外製薬が新設したバイオ医薬品の製造工場が6月稼働する。業界内で注目が集まるのは、同工場が多品種少量生産を実現するから。これまで大量生産を基本としてきたバイオ医薬品の競争環境が大きく変わる可能性がある。

<span class="fontBold">東京・北区の浮間工場内に372億円を投じて整備(右)。6000リットルの培養タンク6基を備える</span>
東京・北区の浮間工場内に372億円を投じて整備(右)。6000リットルの培養タンク6基を備える

 中外製薬が東京・北区で6月に稼働するバイオ医薬品の新工場が業界内の注目を集めている。これまで難しいとされてきた多品種少量生産を可能にするからだ。

 新工場が生産するのは異物を排除するヒトの免疫機能を応用した抗体医薬だ。抗体医薬は化学合成では作れないため、微生物や動物細胞を使って製造する。そこで必要になるのがそれらを培養するタンク。従来は1つの培養タンクで1年中同じ製品を製造するのが一般的だったが、新工場では同じタンクを使い回せるようにした。

 中外製薬はこれまで宇都宮工場(栃木県宇都宮市)に1万リットルの培養タンクを8基備え、関節リウマチ治療薬「アクテムラ」という1種類の抗体医薬を製造してきた。6000リットルのタンクを6基備える新工場の稼働で、開発中の神経疾患向けなど、今後、続々と実用化段階を迎える抗体医薬を効率よく作れるようになる。新工場には372億円を投じた。

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