その理由について、ディスコの武井房子・上席研究員は、「採用数を絞っていることに加え、もはや安定企業というイメージがなくなったことから敬遠されているのではないか」と分析。他業界に目移りする若手人材を何とか取り込みたい。みずほが副業を解禁する狙いの一つはそこにあると考えられる。

 銀行の副業容認の先行例としては、新生銀行がある。昨年4月から全社員を対象に副業を認めており、すでに約50人が申請した。趣味の延長で音楽指揮者として活動したり、仕事の延長でベンチャー企業の財務担当役員を務めたりといった事例が出ているという。ただ、同行の担当者は「銀行が就職先としての人気が落ちる中、多様な人材を確保する面もあって導入を決めたが、数字上で目に見えた効果が出ているとはまだ言えない」と明かす。

 効果があるのかについてははっきりしないものの、みずほの動きを契機に副業解禁を検討する銀行は増えていくとみられる。地方も含め、これまで人気の就職先として優秀な人材を抱え込んできた銀行の姿勢が変われば、副業の浸透度合いが高まることにつながりそうだ。

労務管理に壁、社員への浸透見えず
副業を認める企業は3割程度
●兼業・副業を容認・推進・禁止している割合
副業を認める企業は3割程度<br /><span>●兼業・副業を容認・推進・禁止している割合</span>
出所:リクルートキャリア「兼業・副業に対する企業の意識調査(2018)」

 社員の副業を認める企業はじわりと増えている。2018年9月にリクルートキャリアが社員10人以上の企業を対象に実施した調査では、28.8%が副業を「推進」もしくは「容認」していると回答した。17年調査に比べて5.9ポイント上昇している。

 「社員が副業で得たスキルや知識が本業にプラスに働くと考える企業が増えている」(同社)という。18年は前年の政府の導入方針を受けて企業の動きが広がり、副業元年と呼ばれた。ネット上で仕事を受発注するクラウドソーシングが普及し、会社員が休日などにアルバイトをしやすい環境が整ったことも背景にある。

 16年に解禁したロート製薬では現在約80人の社員が副業に従事している。「元年」より2年早い先行組だ。ただ、早期に制度を整えた企業でも現状では多くて数十人程度というケースが多いようだ。制度はあるが利用がゼロという会社も少なくない。会社側が副業を認めても、本業がおろそかになっては意味がないから気軽には踏み出せない面があるだろう。日本マクドナルドは月に5日以上の完全休業日を設け、本業と合わせて残業時間が月45時間を超えないといった条件を付けた。ユニ・チャームは午前0時を超える副業を禁止している。みずほFGのように後のキャリア形成まで見据えた解禁というよりも「見聞を広める」「本業とのシナジー」が主目的で、そろりとスタートしているというのが実態だ。

 リクルートキャリアの調査で副業禁止と答えた7割超の企業に理由を聞くと、「長時間労働・過重労働を助長するため」(44.8%)、「労働時間の管理・把握が困難なため」(37.9%)が多かった。「人手に余裕がある一部の大手を除き、企業は長時間労働の是正で手いっぱい。外で働かせる余裕はない」(人事コンサルタント)。多くの中小企業では様子見が続きそうだ。

 副業は労務管理の手間やリスクも増す。労働基準法上、雇用主は従業員に対する安全配慮義務を負う。副業先の労働内容や勤務時間も把握する必要があるが社員の自己申告に頼らざるを得ない。副業先で労働災害に見舞われる可能性もある。

 多様な働き方を認める利点と、労務管理上の懸念にどう折り合いをつけるか。社員も本業に差し障りがないかやってみないと分からない。会社側も社員も手探りの中、副業解禁の言葉が先走っている。

日経ビジネス2019年6月10日号 16~17ページより目次

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