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平成最後の決算となった2019年3月期に好決算が相次いだ国内電機大手。米中貿易摩擦などを背景に20年3月期は慎重な姿勢を見せる企業も少なくないが、稼ぐ力は着実についている。平成の30年で国内の基幹産業としての地位を低下させた電機産業。「令和の逆襲」はなるか。

電機産業の貿易黒字額は大きく減った
●日本の電気機器の輸出額と輸入額、貿易収支の推移

 平成最後の決算となった2019年3月期は、国内電機大手の稼ぐ力の回復が鮮明になった。ソニーと日立製作所は2期連続で過去最高の営業利益を達成。中国や韓国の設備投資減退の影響を受けた三菱電機も過去最高だった前の期に比べ11%の減益でとどまった。日立は20年3月期にも3期連続となる最高益を予想する。

 稼ぐ力を強めているのは電子部品メーカーも同じだ。村田製作所は19年3月期に過去2番目となる営業利益2668億円を上げ、TDKは20年3月期に実質ベースで2期連続の営業最高益を見込む。日本電産も20年3月期に過去最高益を更新する見通しだ。

地位が低下した30年

 振り返れば、平成の30年間、日本の電機産業の地位は低下の一途をたどった。象徴するのが貿易黒字額の縮小だろう。財務省の「貿易統計」によれば、平成元年にあたる1989年の「電気機器」の貿易収支は7兆円超の黒字だったが、2018年は約1兆8000億円にまで縮小した。

 輸出産業としての存在感を失わせた最大の要因はスマートフォン(スマホ)に代表される通信機器の輸入増だ。国内の電機大手も携帯電話機を生産してきたが、「iPhone」を引っ提げた米アップルに市場を奪われ、輸出どころか輸入に頼る構図が定着した。

 スマホだけでない。かつては日本の電機産業の強さを象徴したテレビも、中国や韓国の家電メーカーが低価格を武器に席巻。輸出競争力はそがれた。

 さらに打撃となったのは、「産業の米」といわれた半導体業界の地盤沈下だ。30年前には世界の半導体ランキングで首位のNECを筆頭に上位10社のうち6社が日本勢だったが、今は東芝メモリくらい。その東芝メモリも、東芝の経営難から切り離され、今は米投資ファンドが主導する経営体制の傘下にある。日本の「お家芸」とされた液晶ディスプレーも韓国サムスン電子や中国勢にそのお株を奪われた。日の丸液晶の最後のとりでとされたジャパンディスプレイ(JDI)も台湾と中国の3社連合の下で再建を目指すことになった。

 稼ぎ頭の商品が世界の激しい競争の渦の中に放り込まれ、基幹産業としての地位が失われた日本の電機産業。それでも平成の最終年度に好決算を迎えた電機メーカーが出るのは、売り上げの拡大を無理に追わず収益性を重視した経営にシフトできたからだ。

日経ビジネス2019年5月13日号 14~15ページより目次