トランプ米大統領と習近平・中国国家主席による貿易協議が3月中にもヤマ場を迎える。昨年後半の中国経済急減速の要因になった米中貿易戦争は終止符を打てるのか。ただ、仮に貿易面での問題が片付いても、危機の火種は消えない。

<span class="fontBold">閉鎖されたA・P・モラー・マースクの工場から次々にフォークリフトが運び出されていた(2月末、広東省東莞市)</span>(写真=左:ロイター/アフロ、右:UPI/アフロ)
閉鎖されたA・P・モラー・マースクの工場から次々にフォークリフトが運び出されていた(2月末、広東省東莞市)(写真=左:ロイター/アフロ、右:UPI/アフロ)

 「私たちの農産品(牛肉や豚肉などを含む)に対する関税を直ちに撤廃するよう中国に求めた」

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長との2月末の首脳会談で、非核化で合意できなかったトランプ米大統領は3月1日、期待していた外交成果を得られなかったことを覆い隠すように、ツイッターでこう明らかにした。

 昨年7月に米国が中国からの輸入品340億ドル(約3兆7400億円)分に25%の追加関税をかけたことで始まった米中貿易戦争。トランプ大統領は3月1日を期限とした米中協議を続ける意向を2月24日に早々と表明、3月2日に予定していた2000億ドル分の中国製品に対する25%への関税引き上げも延期した。3月中に自らの別荘「マール・ア・ラーゴ」に中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席を招き、対中国の貿易赤字の削減や技術移転問題などで最終合意に持ち込む意欲を見せる。

 来年の大統領選をにらみ、早く手柄を手にしたいトランプ大統領に昨年来、翻弄されてきた中国。経済面への影響は特に輸出工場が集積する中国南部の広東省でつぶさに見て取れる。

「工場はもう倒産した」

中国経済は減速感を強めている
●GDP成長率
<span class="fontSizeL">中国経済は減速感を強めている</span><br />●GDP成長率
●PMI(製造業の購買担当者景気指数)
●PMI(製造業の購買担当者景気指数)
●PPI(卸売物価指数)
●PPI(卸売物価指数)
出所:中国国家統計局

 2月末、電子機器や縫製などの工場が集積する東莞市。デンマーク海運大手のA・P・モラー・マースクのコンテナ工場では、大型トレーラーが工場内で作ったコンテナを搬送するために使われていたとみられるフォークリフトを次々に運び出していた。「工場はもう倒産した」と話す警備員。フォークリフトメーカーは、少し前までは約2000人が働いていた工場から自社製品を回収しにきたようだ。

 工場閉鎖の背景には米中貿易戦争がある。東莞に隣接する深圳には巨大な港があり、ここからマースクは世界中にコンテナ船を送り出している。だが、米中が追加関税を掛け合う中、中国から米国へのコンテナ船需要の先行きには不透明感が強まった。マースクは船に積み込むコンテナを東莞で作る必要性が薄れたと判断、工場閉鎖を決めた。

 中国から米国への輸出額が今年1月まで2カ月連続で前年実績を下回るなど、中国の輸出環境は確かに悪化している。世界最大のコンテナ港である上海港を運営する上海国際港務の2018年12月期の売上高は前の期比2%増にとどまる見通し。17年12月期の19.3%増から急ブレーキがかかった。

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