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インフルエンザの記録的な流行を追い風に、塩野義製薬の「ゾフルーザ」が急速に売り上げを伸ばす。一方でゾフルーザが効きにくい「耐性ウイルス」も出現し、医師の間では懸念が指摘され始めた。好調な売り上げを来シーズンも維持するには、安全性の検証と情報開示が欠かせない。

手代木社長は「患者や医療機関に心配をかけるのは本意ではない」と語る(写真=行友 重治)

 「新薬では副作用や有害事象が発売後に判明することがある。ゾフルーザの普及スピードは速すぎるのではないか」。東京北医療センターでインフルエンザ診療にあたる南郷栄秀氏は懸念する。「手軽さばかりが強調され、安全性に関する議論が不十分になっている」

 今シーズン、インフルエンザは日本全国に蔓延した。国立感染症研究所によると過去10年で最大の流行を記録したという。これを追い風に売り上げを伸ばしているのが、塩野義製薬が発売したインフルエンザ治療薬の「ゾフルーザ」だ。「1回飲むだけで効く」という手軽さから、処方を希望する患者が後を絶たない。「ゾフルーザを欲しがる患者があまりに多くて、入荷してもすぐなくなってしまう」。東京都内でインフルエンザ患者を診察する医師の間では、こんな感想が飛び交っている。

 医薬品卸が医療機関に販売した抗インフルエンザ薬の供給量(昨年12月分)は約226万人分だったが、そのうちおよそ4割の約91万人分をゾフルーザが占めた。第一三共のイナビルと中外製薬のタミフルがほぼ二分していた市場で、一気にトップシェアに躍り出た。

 想定以上に需要が膨らんだため、塩野義は一時的に卸売業者への出荷調整を実施した。同社の手代木功社長は本誌取材に対し「来シーズン用の原薬も製剤化に回している」と前倒しで供給を進める現状を打ち明ける。

 ゾフルーザ好調の影響は、決算にも反映されている。塩野義が1月31日に発表した2018年4~12月期連結決算は、純利益が前年同期比18%増の943億円。ゾフルーザが米国でも承認され、ロイヤルティー収入も増加した。

日経ビジネス2019年2月18日号 20ページより目次