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英国が欧州連合(EU)からの「合意なき離脱」に結論を出す3月29日が迫り、自動車業界に懸念が広がる。輸出にかかる関税だけでない。欧州全域にまたがるサプライチェーンの瓦解も心配だ。1980年代のサッチャー政権時代から生産基盤を築いてきた日本車メーカーも難しい対応を迫られる。

EU加盟国からの部品を受け入れるトヨタ自動車の英バーナストン工場

 「何としても回避していただかなくてはならない」。2月6日の決算会見で、トヨタ自動車の友山茂樹副社長が声を荒らげる場面があった。3月29日に迫る英国の欧州連合(EU)離脱。EUと合意なく離脱すれば、英国は強制的にEUから脱退させられ、これまで無税だった英国からEU27カ国への自動車輸出に10%の関税が課されることになる。友山副社長はこうした事態を何としても避けてほしい、と訴えたのだ。

 不透明感を増す英国の事業環境。その影響はすでに出ている。

 英ジャガー・ランドローバー(JLR)が2月7日に発表した2018年10~12月期決算は最終損益が日本円で4000億円を超す大赤字だった。中国での販売不振に加え、今後の販売や利益の見通しを下方修正したことに伴い資産を評価し直したことが響いた。

英国生産の48%が日本車

 英国の自動車生産台数の約3割(17年実績)を占め、大半を輸出に回すJLRの不振。日本車メーカーも人ごとではいられない。自動車産業の地盤沈下が進んだ1980年代に当時のマーガレット・サッチャー首相の要請に応える形で日産自動車が工場進出を果たすなど、日本車メーカーと英国のつながりは深い。日本車各社が活用したのは、EU加盟国間に関税のかからないメリットだ。

 EU域内から部品を調達して英国で組み立て、輸出する。EU全体をあたかも1つの国としてサプライチェーンを構築してきた。中でも最初に進出した日産の英北東部サンダーランド工場は英国最大規模といわれる。これにトヨタとホンダの生産台数を加えると、昨年の生産台数は約73万台。英国全体の48%を占める計算だ。

 しかも日本車3社は英国で生産する台数の約半分にあたる36万台以上をEU各国に輸出している。英国から輸出する外資系自動車メーカーはほかには独BMWくらい(16年実績で約16万台)。いかに日本車各社が英国拠点を戦略拠点化してきたかが分かる。