『年収443万円』
小林美希著
968円(税込) 講談社現代新書

平均年収では生活が厳しく、まして平均年収以下では、働いていても食事を切り詰める現実もある日本。中間層が消えた国の実態とは。

 タイトルにある「443万円」とは、1年を通じて働いたこの国の給与所得者の平均年収の金額。しかし、正社員と正社員以外に分けてみると、それぞれ508万円・198万円と大きな差が出るし、全体の「平均値」ではなく、大きい順に並べた「中央値」では「300万円超400万円以下」が最も多くなる。無論、格差の拡大によってこの数値がたたき出されてしまったわけだが、著者が強調するのは、この国が「平均年収では“普通〟の暮らしができない国」になっている実態。

 ギリギリの生活をしながら、そこに子育て、介護、不妊治療など、新たな要素が加わるとたちまち生活が立ち行かなくなる。目先の暮らしを心配している生活の中では当然、未来への展望など持てないし、投資どころではない。岸田政権が当初打ち出していた「所得倍増」はいつの間にか「資産所得倍増」に変化していたが、個々の生活を支えながら経済を活性化させていくのではなく、生活に余裕のある人たちにすがるような動きに見える。それは、これまで飛び交ってきた「自助」「自己責任」といった言葉との相性がいい。

 著者自身が就職氷河期世代であることもあり、取材対象にもその世代が数多く登場するが、就職時に正社員の壁に阻まれ、リーマン・ショックがあり、今はコロナショックに直面している。一度レールの上からはじかれた人たちが、二度と戻れない様子が伝わってくる。

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日経ビジネス2023年1月23日号 125ページより目次

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