『異彩を、放て。』
松田文登、松田崇弥著
1650円(税込) 新潮社

障害者が描くアートを商品デザインに活用。従来の障害者雇用と異なる形で障害者の能力を生かすヘラルボニーの挑戦をつづる。

 2018年に岩手で設立されたヘラルボニー。知的障害者の手によるアートをビジネスに転換する企業だ。創業経営者である双子の兄弟、松田崇弥と松田文登が起業の理由とこれからの構想を縦横に語る。自分たちがやろうとしていることが何であって、何ではないのか。静かな迫力をもってストレートに伝わってくる。

 従来の福祉は受け皿として就労支援施設を用意し、そこでの活動で知的障害者が一定の賃金を得られるようにする。しかし、ヘラルボニーは株式会社による商売を通じて収益を獲得し、障害者に利益配分する仕組みを意図している。

 商売の基盤は価値交換にある。買い手が価値を認め、それに見合った対価を支払う。結果として、売り手は収益を獲得する。ヘラルボニーという会社の美点は、この商売の原理原則に忠実なところにある。消費者がヘラルボニーの商品を買い、企業がヘラルボニーの知的資産にカネを払うのは、寄付行為ではない。あくまでもそこに独自の価値を認めた上での価値交換だ。

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日経ビジネス2023年1月16日号 78ページより目次

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