『WHITE SPACE ホワイトスペース』
ジュリエット・ファント著、三輪美矢子訳
1870円(税込) 東洋経済新報社

予定を埋めることで、創造性や生産性が低下すると指摘。何もしない「戦略的な小休止」の時間を持つことの重要性を説く。

 正直に言ってしまえば、この本は読みにくい。例やメタファーも、海外の本であるということもあり、分かりにくい。

 けれども、この本は、読むべき本だと思っている。そもそも、本は服でいえば、フリーサイズで誰にでも合うように作られる。裏返して考えれば、「そのまま読めば誰にも合わない」ということにもなる。

 つまり、読書は本来、読みながら自分の頭の中で、「フリーサイズ」から自分にピッタリの「オーダーメード」へと仕立て直さなければならない。この本は、そういう本だ。

 そう前置きした上で言いたいのは、この「ホワイトスペース」という考え方が、今の世の中を生きる多くの人にとって、とても必要な論点になるだろうということだ。

 僕は自他ともに認めるハードワーカーだが、人生に空白の時間を設けたいと、もはや潜在意識レベルを超えて、本能的に思っている。けれども、実現できないでいる。そうしたハードワーカーにとって、例えばワークライフバランスという言葉はしっくりこない。できるわけがないだろうとどこかで思っている。

 ところが、この本に書かれているホワイトスペースの概念は、ちょっと違うのだ。戦略的小休止という言葉が本書には終始出てくるのだが、本当に少しの時間、例えば、何か依頼をされたときに、脊髄反射的に「イエス」と答えて、将来の自分を苦しめることを、救ってくれるかもしれない。会議の合間の移動時間が、考えを消化するのに役立つのかもしれない。仕事に戦略的に小さくともホワイトスペース、つまりは余白の時間を設けると、たしかに機能しそうに思える。

 そして、ふと、気づくのだ。自分がほとんど休めなくとも、持続可能で働けているのは、無意識的にこの「ホワイトスペース」を取り入れていたからではないかと。

 文章を書くときは、必ず40分書いたら20分休むことにしている。それが最も1日の生産量が多いと経験則的に知っているからだ。講義の登壇と登壇の合間には、意識的に街を歩くようにしている。企画を立てているときに、思考が停滞したら、30分リラクゼーションに行く。そのすべてが、実は「戦略的小休止」の設定であり、「ホワイトスペース」を取り入れることだったのかもしれない。

 そう考えると、本書にある様々なティップス(秘訣)の多くが、アレンジすれば人生に生かせるのではないかと思った。

 少なくとも、社内の仕事をもう一度精査して、ムダを削減できないか、「ホワイトスペース」を設けられないかを考えてみたい。

Writer
天狼院書店店主、作家
三浦 崇典

体験型書店「天狼院書店」を東京、京都、福岡などに10店舗を展開。店舗でのゼミや大学などで、文章執筆や写真、時間術の講師も務める。(写真=山田 菜摘)

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2640円(税込)ハーパーコリンズ・ジャパン

スティーブ・ジョブズ亡き後の米アップルがいかに変化を遂げたか。アップル担当新聞記者の緻密な取材に基づく記録。


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ハーマン・ポンツァー著、小巻靖子訳
2970円(税込) 草思社

1日の総消費カロリーは運動しても増えない事実を説明するとともに、健康に生きるために運動が大切な理由を説く。

日経ビジネス2022年11月21日号 82ページより目次

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