『農家はもっと減っていい』
久松達央著
1144円(税込) 光文社新書

企業勤務を経て農家に転身、農産物の直接販売を手掛ける著者が、農業の現実を踏まえて規模に頼らず「売れる」農業を提言。

 ニューヨークや東京暮らしを経て、数年前から京都に住んでいる。京都に来てしみじみ感じるのが野菜のおいしさだ。私の住む界隈には田畑が多く、「朝採り野菜」の無人直売所もあちこちに。知人から畑で収穫したばかりの有機野菜を分けてもらうこともある。そんな京野菜でつくる滋味深きおばんざいが何よりのごちそうなのだ。

 東京では、有機野菜の宅配サービスをよく利用した。「有機農産物であれば安全でおいしい」と考えていたからだが、著者に言わせれば、それは大いなる誤解らしい。「農薬は危ない」というのは古い“常識”であり、味や香りのしっかりした野菜を育てることは有機以外の手法でもできるという。つまり、私が食べる京野菜がおいしいのは、有機だからではなく、新鮮な旬の野菜だから、ということになろうか。

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日経ビジネス2022年11月7日号 114ページより目次

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