『あいつゲイだって』
松岡宗嗣著
1980円(税込) 柏書房

一橋大学アウティング事件の経緯や性的マイノリティーの状況を伝えるとともに、なぜアウティングが問題なのか、法制度を含めて説く。

 昨年、国会で議論されるはずだったLGBT理解増進法案の提出が見送られた。その理由は、一部の自民党議員が、法案にある「差別は許されない」という言葉などに対して反発したからだという。

 差別をしてはいけないとは思っていない、ということなのか。2018年、自民党の杉田水脈議員が月刊誌で、同性カップルについて「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がない。そこに税金を投入することが果たしていいのかどうか」と述べて問題視されたが、このように性的マイノリティーの人たちを指さし、普通の人たちではないと決めつける動きが、国を動かす人たちの中に色濃く残ってしまっている。

 15年、一橋大学大学院のロースクールに通う生徒が、同級生からアウティングを受け、自ら命を絶つ事件が起きた。アウティングとは「本人の性のあり方を同意なく第三者に暴露すること」。「校舎から飛び降りたのは、私だったのかもしれない」との思いから、アウティングが生む危険性を説くのが本書だ。

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日経ビジネス2022年2月21日号 74ページより目次

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