『グリーン・ジャイアント』
森川潤著
1012円(税込)文春新書

供給側、利用側含め世界で進む脱炭素ビジネスの最前線やマネーの動きを伝える。未来の姿を描けない日本への提言でもある。

 カーボンニュートラルという言葉を聞いて、反資本主義的であるとか、またしても欧米主導でできた流れにうかうかと乗せられるべきではないと思う方にぜひお薦めしたい本だ。

 著者が指摘する現在の世界の動向は5年前に比べ様変わりしている。グリーンを成長問題として位置付ける立場は菅義偉政権の2050年カーボンニュートラル公約にも反映されたが、成長を期待するにとどまらず、もはや後がない、それ以外の選択肢はほぼ詰んでいるという状況である。

 カーボンニュートラル政策の最優先は、産業部門、動力部門にも影響する電力のグリーン化だ。さらに運輸、製造、農業、住宅なども含めた「総力戦」で取り組まねば目標達成は難しい。太陽光発電に関しては固定価格買い取り制度によるバブルが生じた10年間と同等規模で開発や投資が進まなければ目標達成できないが、大規模施設の適地は減少し、災害懸念などもあって小規模なものに頼るしかない。しかも固定価格の買い取り制度は廃止されるため、投資・融資の判断は格段に難しくなる。各種規制や送電網の空きなどの障壁も解決する必要がある。

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日経ビジネス2022年2月7日号 99ページより目次

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