『筒美京平 大ヒットメーカーの秘密』
近田春夫著
935円(税込) 文春新書

ロックからニューミュージック、ディスコサウンドまで、時代の潮流を取り入れて世に音楽を送り出した作曲家の技と素顔を伝える。

 作曲数は3000曲、シングル総売り上げは7560万枚で1位。筒美京平は名実ともに日本一のヒットメーカーだった。音楽は形がないものだけに、その価値は言語化が難しい。抜群の音楽言語化能力の持ち主である著者は、筒美楽曲の魅力だけでなく、素顔や人となり、創作のスタイルについても縦横に語る。

 決して人前に出ず、淡々と作曲に打ち込む。それは決して「裏方に徹する」という職人的美学ではなかった。とくに秘密主義者ということもなく、個人的につきあうとプライベートなことについてもオープンに語る人だった。東京人としての含羞、さらには、自分が好きな音楽と創っている音楽が異なることに対する含羞があった、という。

 あくまでも上品で、お高くとまったところがない。長年にわたって芸能界の中心にいながら、一切その水には染まらない人で、ひとつのミッションとしてヒットは狙うが、世俗的な上昇志向や権力欲は皆無。音楽理論を知悉(ちしつ)していたけれども、これ見よがしにアカデミックな曲を書くのも恥ずかしいと思っていたフシがある。あくまでも仕事として大衆に受ける音楽を創り続けた。自分を見込んでくれた発注者に対し、全力で仕事することにやりがいを感じていた。プロの仕事の理想を見る。

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日経ビジネス2021年12月13日号 109ページより目次

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