
最後の「告白」』
児玉博著
770円(税込) 文春文庫
セゾン文化で一世を風靡した堤清二氏が死の1年前、父・康次郎氏、弟の義明氏との関係を振り返り、一族の物語を明かす。
本書の主題は堤清二と父・康次郎との葛藤にある。父の堤康次郎は立志伝中の怪物。中軽井沢の別荘地の不動産開発から身を起こして、鉄道と不動産の合わせ技で西武グループをつくり上げた。「ピストル堤」といわれた剛腕で、同業の小林一三のような構想や理念は横に置き、ひたすらカネと名誉を求めた。
清二は康次郎の内縁の妻の長男として生まれた。父を憎悪し、西武グループの後継者に指名された異母弟・義明と対立し、それでも最期まで堤家に執着するという清二の複雑な性格と人格が浮かび上がってくる。義明と対照的に、清二が譲り受けたのは池袋にあったボロボロの百貨店ひとつだった。これを振り出しに、独自の才覚を頼りに次々と事業を拡張。西武百貨店で渋谷に進出し、パルコ事業と合わせて渋谷を若者の街に変貌させた。世紀のコンセプトと言える無印良品をはじめ、ロフト、J-WAVEなどいくつもの新規事業を立ち上げ、西武グループのプリンスホテルに対抗してホテル事業にも参入した。日本初の小規模ラグジュアリーホテル「ホテル西洋銀座」も清二の「作品」として記憶に残る。
辻井喬の名前で詩人、小説家としても才能をいかんなく発揮した。経営を退いてからは次々に本格的作品を著し、谷崎潤一郎賞、野間文芸賞から日本芸術院賞・恩賜賞まで、ありとあらゆる賞を受賞している。
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