『東京の古本屋』
橋本倫史著
2200円(税込) 本の雑誌社

オリンピックや感染症に揺れる東京の古書店10軒に密着。本を新たな読み手へと渡していく各店の姿、東京の風景をつづる。

 アイコンタクトというのは人の目と目だけで行われるわけではない。たとえば、古本屋の棚にささっている背表紙に「目」を感じる。見つける、ではなく、もうちょっと、双方向のコミュニケーションって感じがする。このあいだ来た時は1500円だったのに、950円になっていた。「そろそろどうですか」と告げられた気になる。「そうですね、そろそろですね」とレジに持っていく。

 寡黙な店主は、最近、950円にした本だとわかっている。物音ひとつしないのに、いくつものやりとりが生まれている。古い本なのに新しく呼吸しているし、それを引っこ抜けば、それはもっと本格的に呼吸を始める。蘇生と書くと、それまでは死んでいたみたいだが、生き返らせた実感が確かにある。

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