
FT編集長が見た激動の15年』
ライオネル・バーバー著、
高遠裕子訳
4400円(税込) 日本経済新聞出版
質の高い報道を続けつつ、紙からデジタルファーストへの転換を成功させた辣腕の前編集長が、世界秩序が激動した時代を回顧する。
世界的に権威ある新聞フィナンシャル・タイムズ紙(FT)の前編集長ライオネル・バーバー(LB)の回顧録である。私は、政治家や銀行家の回顧録の多くを読んでいるが、ジャーナリストのそれは初めてだ。LBは、2005年から15年間もFTの編集長を務めたが、その間、世界はリーマン・ショック、ブレグジット、トランプを筆頭とするポピュリズムの台頭、米中対立など激変に晒(さら)され、今は、コロナ・パンデミックの渦中にある。FTも15年に日本経済新聞に買収される衝撃の事態を迎えたが、LBは記事の質の向上を図りつつ紙からデジタル化を進め、有料購読者を100万人まで伸ばし経営者としても成功を収めた。
本書には、LBがインタビューした政財界のリーダーの人となりが鋭く描写されている。トランプ大統領の側近が「(トランプは)自制心がきかない」「彼はポピュリストではない。日和見主義者(オポチュニスト)だ」と呟くのを聞き逃さない。プーチンは自分に逆らう人間に対し「裏切り者は罰しなくてはならない」と言う。LBにふと漏らすこうした一言が、どんな百万言よりもリーダーの人間性を浮き彫りにする。リーダーたちはFTに評価されることを望み、LBと頻繁に会う。だが、この本に日本人リーダーはほとんど登場しない。東日本大震災の際に官房長官だった枝野幸男氏と安倍晋三首相だけだ。一方、中国やサウジアラビア、ロシアのリーダーは年ごとに増えている。
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