『室町は今日もハードボイルド』
清水克行著
1540円(税込) 新潮社

東に鎌倉幕府、西は公家社会、地方には荘園、さらに戦国大名が割拠した中世日本。アナーキーで意外な日本の姿をつづる。

 道徳の教科書に出てくる日本の「道徳的な人物」は古代・近世・近代の人ばかりで、中世人はいない──言われてみればその通り。中世の価値観と規範意識は現代のそれとは大きく異なる。中世人は現代人の常識や道徳を脅かす存在なのである。

 「公権力に頼らない自力救済原則」「神仏に対する呪術的信仰」「多元性と多層性」、これが中世社会三大特質だと著者は言う。東国には幕府政権、西国には天皇を中心とする公家権力が並立していた。加えて「荘園」という中世に独自の統治単位が錯綜(さくそう)していた。中世の終わりには戦国大名が割拠し、それぞれ自分の領国を事実上の独立国として支配するに至ったが、庶民は庶民で「ムラ」という、より小さな独立単位を基盤に生きていた。

 このような状況下で、幕府は幕府法、公家は公家法、荘園は本所法、ムラは村法といったように、それぞれが独自の法秩序に基づいていた。

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