『働くことの人類学』
松村圭一郎、コクヨ野外学習センター編
2200円(税込) 黒鳥社

狩猟採集や牧畜、アフリカの貿易商など、文化人類学の研究者らが世界の働き方を体験し、「仕事」論を展開する。

 今、自分はこうして、パソコンに文字を打ち込むことで原稿料をもらい、その繰り返しによって生活を成り立たせているわけだが、こうやって、少し目立つというか、名前を出す仕事をしていると、「好きなことを仕事にできてイイね」と言われることがある。

 そう言われた後で、好きなことを仕事にしているのかな、と改めて考え込んでみる。様々な仕事をしてきた人と、ずっと同じ仕事をしてきた人、その両者には大きな違いがあるのだろうが、様々な仕事をしてきた人にしても、これまで500種類の仕事をしてきました、今はパティシエですが、ちょっと前までは高所専門の清掃員、その前はブラジルからコーヒー豆を輸入する仕事をしていました、という人はいない(いるのだろうか)。

 つまり、私たちは、「働く」という経験を重ねてきたものの、あくまでも、自分の経験において働いてきたにすぎない。それが本当に最適な選択なのかどうかは、分からない。分からない中で、働くこととはどういうことなのか、を毎日のように考える。

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日経ビジネス2021年7月19日・26日号 105ページより目次

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