
ナサリア・ホルト著、石原薫訳
2860円(税込)フィルムアート社
米ウォルト・ディズニーのアニメーションの制作に多大な貢献をしながらも、スタッフロールに名前すらない女性たちに光を当てた記録。
幼い頃、ディズニー版『眠れる森の美女』の絵本を繰り返し読んだ。元になったアニメーション映画は見たことがなかったが、幻想的な絵と色使いに魅せられたのだ。残忍で暗い物語だった原作をディズニー・スタジオのアーティストたちは、ハッピーエンドのおとぎ話に仕立てたという。『ダンボ』『シンデレラ』『ピーター・パン』──制作から半世紀以上を経ても、その“魔法”は解けない。
こうした初期のディズニー・アニメーションでは「ナイン・オールド・メン」と呼ばれる男性アニメーターの活躍がよく語られる。だが本書によれば、『白雪姫』(1937年公開)の制作時から、実は女性たちも責任ある立場に就き、ストーリーやキャラクターの構築に関わっていたらしい。
著者は丹念な取材によって埋もれていた事実を掘り起こし、その功績に光を当てる。例えば、クラシック音楽とアニメーションを融合させた傑作『ファンタジア』(40年公開)では、ウォルト・ディズニーの高校の同級生でもあるビアンカ・マジョーリーが選曲に関与した。チャイコフスキーのバレエ組曲「くるみ割り人形」を彼女が選んだことが、結果的にこの曲を世に知らしめるきっかけとなったのだ。
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