『日本外食全史』
阿古真理著
3080円(税込) 亜紀書房

メディアや経済の影響を受ける外食文化、和食の発展、日本における世界の料理など多角的にまとめる。コロナ後の外食も考察する。

 ああ、外食したい。いや、外食をしてはいるのだが、自分にとって、外食とは「そのヒレカツひとつちょうだいよ」「イヤだよ」とやりとりするものであり、すぐ隣の人が頼んだラーメンのほうがおいしそうだなと身を乗り出したりするものであり、「頼みすぎちゃったけど、このまま残すのはもったいないから、無理やり食べ切ろうよ」と頑張ってみたりするものである。

 もう1年半も、こういう感じの外食ができていない。どうでもいい会話をするためには、外でご飯を食べて、長時間居座ってみるという、あのシチュエーションが必要なのだ。阿古真理『日本外食全史』を読み、昔を懐かしむような気持ちにさえなってしまう。ファミレスで駄弁(だべ)る、居酒屋で愚痴る、そんなこと、わざわざ求めなくても繰り返されてきたはずだった。昨年は、「『外食元年』と言われた一九七〇年から五〇年の節目の年」だったのに、その動きが止まってしまった。

 高級料理店から庶民の店まで、和食・洋食・中華を網羅し、この国の外食の歴史を振り返っていく。かつての東京オリンピックの時には「日本人にちゃんとしたパンがつくれるのか?」とまで言われていたという。逆にいえば、かなりの短期間で、ありとあらゆる外食産業が膨らんでいったのだ。

 自分が学生の頃は、店先に「雑誌『〇〇』で紹介されました!」と、どんなに色褪せようとも掲載された雑誌の切り抜きを貼り続けていたお店が多かったが、今では、多くの店でSNSの発信を強化している。グルメ情報サイトの書き込みに一喜一憂しながら、実際に来てくれた人に対し、インスタ映えを意識したものを出すなどしている。

 家族のあり方が多様化してくれば、当然、“ファミリー”レストランは業態の変更を余儀なくされる。2010年代に入り、から揚げ専門店が流行(はや)ったのは、「家族が縮小し、共働きもふえた」ことと無縁ではない。

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