『見えない人間』(上下)
ラルフ・エリスン著 松本 昇訳
上2640円、下2530円(共に税込) 白水Uブックス

1930年代の米国を舞台に、逃れようのない人種差別の社会で、真面目に生きようともがきながらも報われない黒人青年の葛藤を描く。

 「僕は見えない人間である」。この言葉で始まる本書は、1952年に発表された全米図書賞の小説である。70年近く前に発表されたものが、今日、新たに発刊されたのは理由がある。それは米国から派生したBLM(ブラック・ライブズ・マター)運動が世界中に拡大しているからである。

 主人公は米国南部生まれで、白人に好かれる模範的黒人青年だ。彼は、黒人大学に入学するために支援者たち(白人だろうと思われる)が歓声を上げるリングで黒人青年たちと殴り合う。それに勝利し、彼は黒人大学への切符を手に入れる。賞品は最高級の牛革の折りかばん。主催者は「このかばんは黒人の運命形成に役立つ重要書類でいっぱいになるだろう」と彼の勝利を祝福する。その夜、彼は奴隷だった祖父の夢を見る。祖父は折りかばんの中に入っていたメッセージを彼に読めと言う。その内容は「この黒人少年をずっと走らせよ」だった。いったい誰に走らされるのだろうか?

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