『孔丘』
宮城谷昌光著
2000円(文芸春秋)

正式な妻ではなかった母の死、息子との対立、ライバルとの争い。怒り、悩みながら生きる、一人の人間として孔子を描く。

 「日本資本主義の父」とたたえられる渋沢栄一がNHKの大河ドラマにとり上げられ再評価されている。彼には孔子の思想を著した『論語』と経営との一致を試みた『論語と算盤』という有名な著書がある。その中で彼が主張するのは、義(企業倫理)が無ければ利(企業経営)はうまくいかないという「義利合一」の考えである。これは現在の勝者総取り的な新自由主義経営思想へのアンチテーゼとしてESGやSDGsにも通じるものである。

 『論語』に興味を持つ経営者も多いだろうが、ぜひ『論語』の前に本書をひもといてもらいたい。前書きに「失言があり失敗もあった孔丘という人間を書くのであれば、なんとかなるのではないかと思った」とある。尊称の孔子ではなく、本名の孔丘という書名をつけた由縁だろう。本書には神格化された聖人孔子ではなく、私たちと同様に苦悩する人間孔子が生き生きと描かれている。

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