『そこに工場があるかぎり』
小川洋子著
1400円(集英社)

人気作家がものづくりの現場を訪ねてつづったエッセー。旺盛な好奇心と作り手への敬意が伝わる。

 小学生時代に行った社会科見学の思い出を聞かせてほしい、と問えば、色々な話を聞き出すことができる。猛スピードで何かが出来上がっていく工程、いつも見ているものが形になる光景に、とにかく興奮した。大きなパン工場へ行き、できたての菓子パンをもらった。いつものパンなのに、それを大切に食べた記憶がある。

 小川洋子『そこに工場があるかぎり』は、様々な工場を訪ね歩くエッセー集。小川は、子どもの頃、地元の駅の近くにお菓子工場があり、その中で何が行われているのか、想像し続けていたという。「体育館よりも広い床を一面に埋め尽くすクッキー生地。ダムの放水のように噴出するソーダ水」。そうそう、そうやって、想像を膨らますのが楽しかった。無限にゼリーを食べたいとか、蛇口をひねったらコーラが出ないかなとか、そういう考えを真剣に残していた頃、工場には夢が詰まっていた。

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