
藤村シシン著
1500円(実業之日本社)
古代ギリシャ愛にあふれた著者が、新たな知見に基づき、学校でも本でも教わらなかった神々の物語を語り下ろす。
東京五輪の開催が1年延期になった時、実は2021年こそが本来のオリンピックイヤーなのだと教えてくれた人がいます。『古代ギリシャのリアル』の著者、藤村シシンさんです。これまでつきまとった「1年のズレ」が解消されるばかりでなく、紀元前776年に始まった第1回古代オリンピックから数えると、来年は記念すべき700回目のアニバーサリーにあたる、とも。
若い研究者の、この“ゲンのいい”発言に、コロナ禍のユーウツな気分が和らぎました。いまコニカミノルタプラネタリウムで公開されている「R18オトナ♥プラネタリウム──古代ギリシャの恋愛博物館」を監修したのもこの方です。ユニークな古代ギリシャ・ギリシャ神話研究者が現れたものだとうれしくなります。
この本はいきなり、古代ギリシャのイメージである「青い海、白亜の神殿!」なんてものは幻想だ、という強烈な一文から始まります。あのパルテノン神殿にしても正面だと思っているのが実は裏側で、本当は神殿ですらないかもしれない……と。
冒頭に載せられた「現代・古代・神話」の時代を重ね合わせたギリシャ地図、年表、オリンポス神話12神の相関図を眺めているだけでもワクワクします。古代ギリシャの誤ったイメージはなぜ生まれたのか、という第1章、ギリシャ神話の世界を述べた第2章、そして古代ギリシャ人のメンタリティを探る第3章まで、グイグイ引き込まれてしまいます。図表、写真、脚注もふんだんにあり、マニアックな読者の期待にも応えます。
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