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『東大卒、農家の右腕になる。』
佐川友彦著
1800円(ダイヤモンド社)

東京大学を出た著者が、問題を乗り越えて、梨農園で経営改善を積み重ね、ついに直売率100%を達成する。

 もしかして、農業というビジネスは、あらゆる起業のモデルケースになりえるかもしれない。今回、この3冊の本を読み、ひらめきのようにそう思った。第1に、農業の成功は、農作物という「商品の質」がベースになければ成り立たず、第2に、自然を相手とする農業は、予測不可能性の塊であって、ちょうど手探りで自ら解決法を見いださなければならない起業と似通っていて、第3に人との関わり合い、助け合いが必要不可欠になるからだ。

 『東大卒、農家の右腕になる。』は、梨農園にインターンとして入り、文字通り右腕として、特にオペレーション改革に挑む話だ。前半部分は、ドキュメンタリー形式、後半部分はTipsという2層構造になっている。しかも、前半部分のドキュメンタリーは、“東大”のキーワードで手に取った読者も感情移入できるだろう。なぜなら、著者は東大に入り、いわゆる優良企業に就職しながらもうまくいかず、心療内科で受診するほどに追い詰められ、人生を迷っていたときに梨農園と出合い、自分の存在意義と自信を見いだすからだ。後半部分のTipsには100の改善案があり、これが基本的なことではあるが、ほとんどの業種に応用可能で、さっそく、当社でも取り入れようと思った。

 著者である東大卒の右腕はもちろんだが、僕はこの阿部梨園の3代目阿部英生氏と、梨を作ってきた方々の思い、とんでもなくうまい梨を作るという職人技がすばらしいと思った。農業でも、ほかの職種でも変わりないが、この「商品の質」がすべてを決めると思う。オペレーションなどの改善は、その次の話で、その「商品の質」があったからこそ、業務改善がうまくいったのだろう。