『新橋パラダイス』
村岡俊也著
1600円(文芸春秋)

再開発計画によって失われゆく新橋駅前ビル&ニュー新橋ビル。そこはまさに現代に残る昭和の秘境だった。

 ニュース番組をある程度見ている人ならば、もっとも目にしている街は東京・新橋に違いない。どんなニュースでもひとまず「街の声」を収集するのは悪癖だと思っているが、テレビ局から近いという理由と、ご機嫌なサラリーマンを捕獲しやすいという理由で、何かと新橋駅前SL広場に向かう。

 村岡俊也『新橋パラダイス 駅前名物ビル残日録』は、そのSL広場に隣接するニュー新橋ビル、駅を挟んだ東口にある新橋駅前ビルに足を踏み入れ続けた記録だ。カメラに向かって感想を述べるあの広場のすぐそばに、これだけ、奥深い、いや、その奥さえ見せない世界が広がっていたのかと繰り返し驚く。新橋駅周辺は戦後の東京でもっとも早く闇市が立った場所といわれ、その雑然を引き継ぐかのように、2つのビルの中に無数の店が立ち並ぶ。喫茶店、立ち飲み屋、金券ショップ、雀荘、中国系マッサージ……様々な欲望を吸収しながら、営業を続けている。

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