『類』
朝井まかて著
1900円(集英社)

森鷗外の子として、恵まれた環境に生まれながら、父のようにはなれない主人公の人生を描く。

 鷗外、森林太郎は5人の子をなし、上から順に、於菟(おと)、茉莉(まり)、不律(ふりつ)、杏奴(あんぬ)、類(るい)とそれぞれに欧風の名前をつけた。タイトルの『』はLouis、鷗外の三男坊をモデルにした小説だ。

 於菟は先妻の子であり、不律は夭逝(ようせい)しているので、類は3人姉弟の末っ子のように育てられた。大文豪であり陸軍軍医総監まで登り詰めた鷗外の子として期待されるも、学業は冴えない。叱咤(しった)激励されるが、中学校を中退して絵画を学び始める。

 鷗外亡き後も遺産と莫大な印税があったため、生活は優雅なものだった。いっしょに絵画を学んでいた杏奴のお目付け役としてパリ遊学も経験する。

 日本からの留学生たちと遊ぶサンジェルマンの森でのピクニックはファンタジーのような情景だ。このシーンだけではない。観潮楼の庭の花畑など、ビジュアルに訴えかけてくる場面があちこちに美しくちりばめられている。

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