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『ハダカデバネズミのひみつ』
岡ノ谷一夫監修
1400円(エクスナレッジ)

特徴的な外見や老化しない体に加え、厳しい階級制度を作り、仕事中毒という、珍しい生き物の秘密を探る。

 岡ノ谷一夫監修『ハダカデバネズミのひみつ』。このカバーに載っている写真を見て、ほほ笑ましく思う人もいれば、ちょっとのけぞる人もいるだろう。いずれにせよ、見慣れない姿形をしている。裸で出っ歯のネズミ、だなんて、何だか、悪口がそのまま名前になったかのよう。

 10年以上前、私が取材で初めてこのネズミを目にした時の反応といえば、「かわいい!」だった。えたいの知れない生き物が懸命に動いている様子に動揺しながらも心を奪われた。このハダカデバネズミは知れば知るほど、あらゆる可能性を含んでいることが見えてくる生き物。「がん化耐性」を持っており、その仕組みの解明が急がれている。アリやミツバチのように、「真社会性」といわれる階級社会を持ち、哺乳類では極めて珍しいという。

 繁殖する個体は1匹の女王と数匹の王のみ。あとは周辺で働きまくる。女王は、ちゃんと働いているかをチェックして回り、寝る時には何匹かの雑用係が、あたかも布団のように女王や王にかぶさるのだという。職業階級が明確であり、階級によって鳴き声も使い分けられている。

 個体としての潜在能力が注目されており、2017年には、まったくの無酸素状態でも最長18分生存できるという研究結果も明らかになった。マウスやモルモットの寿命は数年程度なのに、ハダカデバネズミは30年弱も生きる。なぜ老化しないのか、これもまた研究途中にある。

 彼ら自身は、なぜ自分たちがこんなに研究されているのか、注目されているのか、知る由もないだろう。特殊な個体が握っているかもしれない秘密をまだまだ探り出そうとする研究者たちの声がやたらと熱い。