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 新型コロナウイルス感染拡大を伝えるニュースで、閑散とする渋谷駅前のスクランブル交差点の模様を頻繁に見かける。あの映像に繰り返し見入ってしまうのは、あそこに人がいないという状況が、「非日常」として象徴的だからなのだろう。

 渋谷駅周辺は、永遠に終わらない工事を披露し続ける場所と化しており、「これから便利になりますので不便をおかけします」という傲慢さを感知する。だが、誰に不満を表明すればいいのかわからず、素直に人の波にのまれて、すっかり疲弊してしまう。できるだけ渋谷で降りないようにしていると誓う知人が何人もいる。渋谷、最近、結構嫌われてきている。

『渋谷上空のロープウェイ』
夫馬信一著
2200円(柏書房)

戦後、渋谷につくられたロープウェイを切り口に、明治から令和までの渋谷の開発を追うノンフィクション。

 この辺りに、線路をまたぐようにロープウェイが通っていた時代がある。夫馬信一『渋谷上空のロープウェイ 幻の「ひばり号」と「屋上遊園地」の知られざる歴史』は、わずか2年程度、渋谷の上空に浮かんでいた「ひばり号」の全貌を執拗な調査によって明かした一冊だ。戦後間もない1951年から53年の間、当時の東横百貨店本館と東横百貨店別館を結んでいた。