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 200人以上の終末期の患者を見守ってきたベテラン訪問看護師。彼の仕事は、患者が死を受容できるように心を砕き、残された時間を悔いなく生きるように手助けすること、です。その彼が、48歳の若さで末期のすい臓がんを宣告されます。それから死に至るまでの8カ月余、揺れ動く心の変化に目を凝らし、彼がどのように死を受け入れ、最期の時を迎えるのか、つぶさに描き出したノンフィクションが『エンド・オブ・ライフ』です。

『エンド・オブ・ライフ』
佐々涼子著
1700円(集英社インターナショナル)

死と向き合ったある訪問看護師の物語。「人生を生ききった」と満足できる「エンド・オブ・ライフ」を考える。

 看取る側から看取られる側に立場を転じた彼の言葉が胸に響きます。「僕はあきらめていませんよ」「生きることを考えてます」──。

 「予後を気にして生きていたら、それだけの人生になってしまう。僕は僕自身であって、『がん患者』という名前の人間ではない。病気は僕の一部分でしかないのに、がんの治療にばかり目を向けていたら、がんのことばかりを気にする人生を送ることになってしまう。闘うのではない。根治を願うのでもない。無視するのでもない。(略)僕の『人生』を生きていきたいんです」

 「死を宣告された病人」という物語に身を任せるのではなく、「今を生きる」ことのかけがえのなさを、彼は身をもって著者に示します。これまで出会ってきたさまざまな患者の「命の閉じ方」や、著者自身の両親の在宅療養の風景も織り込んで、「生きる」とは何か、という根源的な問いを投げかけます。著者が7年の歳月をかけた力作です。