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 ゾンビがある日私たちを襲ったらどうなるか。国家はどのように対応するのか。そもそもゾンビの脅威の本質とは何か。本書はそんな荒唐無稽に見える問いを大真面目に立てて、一冊まるごと『ゾンビ襲来』というテーマに割いています。2012年に出版された当時も話題になりましたが、当時はどちらかというと、「通」の人の間でもちきりになったように思います。

『ゾンビ襲来』
ダニエル・ドレズナー著
谷口功一、山田高敬訳
2000円(白水社)

ゾンビに対する国や国際社会の対応を著名な国際政治学者が描く。新型コロナウイルスの感染拡大で注目を集める。

 ゾンビの突発的発生。ふざけているのかと思われるような事象を真面目に取り扱う意味は、著者が述べるように「ゾンビは、医学的疾患、暴徒による支配、マルクス主義的弁証法の重要なメタファー」だから。人びとは、安全を確保して生きたいと切に願いますが、人間の限界として全ての脅威を知覚することができません。どこかに気づいていない脅威があるかもしれない。その未知や不可知の脅威を象徴して、ゾンビ映画や作品が次々と作られているのだと本書は指摘します。確かに、ゾンビ映画がここまで人気なのは、人間が「分からない恐ろしいもの」に対する本能的な関心を寄せるからなのかもしれません。